会員数250万人のメンタルヘルスケア専門企業が運営する「未病ケアラボ」

メンテナンス

タッチケアと“未病”

2019.10.3

皮膚感覚は、ストレスと孤独を癒す”やすらぎ”の源泉。

あたたかくて、やわらかくて、心地いい。それだけで、何故かほっとする。
タッチケアとは「触れるケア」の総称で、治療目的ではなくケアや癒しのため、家族間や看護・介護等の対人援助の現場、そして自分自身にも活用できるケア法です。
やさしく包むように手をあてる、ゆっくりと撫でる、オイルやローションを使ってのハンド・トリートメント等、スタイルは様々。今日は、タッチの基本的なお話から始めましょう

タッチケアの心地よさの柱は、まずは安心感。安全な空間で、信頼できる方に触れてもらうこと。そして、つながり感。一人ではない感覚。また、触れられることで、“今・ここ”でのからだへの気づきも深まり、自分がここに在る(being)感覚もささえます。
さらに、皮膚へのやさしい刺激は末梢神経から中枢神経を経て脳へと伝わり、自律神経系のバランスを調えます。自己尊重感や多幸感を促すオキシトシンやセロトニンの分泌も促し、ストレスホルモンのコルチゾールの分泌をおさえます。そして、相乗的に免疫力も高めます。

受精卵のはじまりの時、皮膚は、脳・神経と同じ外胚葉から発達しました。胎児の皮膚は、子宮の中で全身が包まれるように触れられ、その皮膚感覚は安らぎの源泉となります。
誕生後も大切に抱かれ成長していく中、もしも、乳幼児の赤ちゃんに、抱っこや愛撫が十分に届けられなければ、心身の発達や時には生存にも深刻な影響を及ぼします。赤ちゃんにとって、やさしく触れられることは、お乳やミルクの栄養以上に必要なこと。でも、実は、大人になってからも、心身の健康に大切なことでもあるのです。

日々の健康と“タッチケア”

多くの身体的・精神的な病の背景に、「ストレス」と「孤独」があります。ストレスは、交感神経を刺激し、呼吸や心拍を乱し、からだの中の炎症を高め、不安や怖れ、痛みを増幅し、時には重篤な病の原因となります。「孤独」もまた、安らぎとつながりを疎外し、生きる力を徐々に蝕むことが、近年の研究で明らかになりつつあります。

やわらかで、あたたかな人の手が届ける“タッチケア”は、誕生の始まりに由来する安らぎの源泉とつながり、深いリラクセーションを届け、自律神経系・内分泌系に作用することでストレスを緩和します。そして、孤独を癒し、つながりを再生し、生命力を高めます。
現代社会では、触れられる機会が徐々に減りつつありますが、日常生活で、安心できるつながりをもち、ぜひタッチケアをご体験ください。肩や背中に手をあてたり、さすったり、ハグやハイタッチや握手等、まずは簡単な触れ合いから取り入れていきましょう。

次回は、「効果的な触れ方とその注意点」をお伝えしたいと思います。

中川 れい子 氏
NPO法人タッチケア支援センター理事長  
<身(み)>の医療研究会理事
http://touchcaresupport.com/

1963年兵庫県生まれ。関西学院大学文学部卒業後、塾・予備校で「日本史」を担当。阪神淡路大震災で被災・ボランティア活動後、ボディワーク・心理カウンセリング・ヒーリング・ソマティックス等を学び始め、1999年エサレン ®ボディワークと出会い、認定施術者となる(施術歴20年)。2011年、NPO法人タッチケア支援センターを設立後、タッチケアの普及・教育・ボランティア活動を開始。家族間ケア・看護・介護等、対人援助のための「こころにやさしいタッチケア」講座を関西と東京で開講する。高齢者施設・がん患者会・緩和ケア病棟・ 産科等での施術活動や、各機関での出張講座もおこなう。米国ホスピタル・ベイスド・マッサージの海外講師を招聘しての講座オーガナイズも活動中。

中川 れい子さんの記事一覧

  • f
  • LINE