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メンタルケア

ハラスメントしやすいひとつのタイプ、自分はちがう?

2019.11.8

年齢を問わず、多くのストレスを抱えている現代人。職場や家庭、友人やご近所付き合いなど、人間関係においても多くの悩みを抱えています。そこで、未病ケアラボ編集部が、トラウマケア「こころのえ相談室」を開業されているメンタルカウンセラーの井上陽平先生に、日々の暮らしの中で気になるアノコト、コノコトについて伺います!

Q: 最近、よく耳にする“ハラスメント”って、何ですか?

A: ハラスメントというのは、相手に対して意図的に不快にさせる言動をとり、精神的、肉体的に被害を与えることを言います。人が嫌がる、道徳性に欠けた行為といえます。イタズラやイジメなども、含まれるでしょう。ただし、職場でのハラスメントが問題となるのは、道徳性に欠けた言動ということだけでなく、上司と部下といった権力関係もベースにあります。部下は、上司にむかって反論しにくい立場にあるため、上司の不快な言動に対し、ただ耐えなければならない状況が起こります。また、プライベートに踏み込んだ質問も、ハラスメントととられる可能性があります。しかし、相手の懐に入り込んで話しをするのを好む人もいるため、線引きが難しいのが現状。このケースは、相手に不快な思いをさせようと思っていないことが多いようです。加えて、言葉を受け取る側の感受性によっても、その発言がハラスメントになるかどうかが変わってきます。相手の言葉を、すぐに悪く受けとって、傷つきやすい人は、悪意がない場合でも、ハラスメントとして受け取ってしまう傾向にあります。相手との信頼関係を築くこと、また、相手の性格や性質に配慮したコミュニケーションを心掛ける必要があります。

Q:ハラスメントを起こしやすい傾向ってありますか? その対策があれば教えてください。

ハラスメントを起こす原因は、その人の体調や性格など、本人の要因だけでなく、周囲の環境なども関係してくるため、一概にはいえません。ただ、私がトラウマのカウンセリングをしている中で感じるのは、幼少期にトラウマを抱えている方は、その傷に触れるようなことがあった時に、反応が起こり、ハラスメントの加害者になる可能性があると考えています。特に、幼少期にトラウマを抱えているか、もしくは発達障害をベースに持っている方の、ある1つのタイプの方達は(ここでは自己愛タイプと呼びます)、ハラスメントという形をつくってしまう傾向があります。自己愛タイプの方達は、子ども時代を不幸な環境で育ってきているため、危険などを察知して、自分を守ろうとします。それが第一の身体の反応になり、脅威を遠ざけようとする防衛が働き、突発的なストレスや不快なことに、すぐに反応してしまいます。本人は気づいていませんが、常に、心と身体が緊張状態で身構えています。そのため、肩こりがひどい、身体がこわばって緊張しているという症状がでやすい傾向にあります。

また、自己愛タイプの方達は、自分の思うように人が行動してくれないと納得せず、違った行動をされるとイライラしがちです。人が自分の思うような言葉をかけてくれないと、気分を損ねて、投げやりな態度を取るというような特徴も見られます。期待に応えようと、自分が計画したことに一生懸命取り組みますが、自分中心に物事を進められないと、元気がなくなりやすいです。気分が良い状態を保って、ストレスをためないようにするために、職場で苦手な人がいると、その人をターゲットにして、パワハラをするようになっていく傾向があります。自己愛タイプの方達も、普通の状態では、人との関りを持ちながら、一般的に問題なく生活されています。社会人になって、自分の状況から何かおかしいと気が付き、カウンセリングに来られる方もいらっしゃいます。ご自身が可能性を感じられたら、専門家のもとでカウンセリングを受けられることをおすすめします。

本人が、このタイプである場合の対応策としては、一番大切なことは、本人が意識的に、自分がハラスメントをしているかどうかに気が付くことです。そして、そういう状況になった時には、自分の感情や行動をコントロールして、気持ちを切り換えることが大切です。
自己愛タイプの方達に限らず、パワハラをする人は無自覚の場合が多く、とっさの反応で感情をぶつけていることが多いです。物事を考える時に、相手の気持ちや立場などを思いやる努力が必要といえます。不快な事に直面すると、筋肉が硬直して神経が張りつめるため、その緊張を緩めるために、過激な感情や行動になります。不快な時の、自分の筋肉の縮み具合や伸ばし方を自覚して、コントロールしていく事が重要であり、自分の身体をみていく訓練が必要です。それを行うことにより、突発的な対応を抑えることができるようになるなど、問題を起こす可能性を軽減できるでしょう。また、周囲にこのような方がいらした場合の対処法としては、立ててあげる、話を聞くことに徹する、馬鹿にされたと感じないように対応する、プライドを傷つけるような言動をしないことなどを心掛けていただくのが、調和のとれた環境を作りに有効的です。一方、パワハラの被害に遭っている方は、各相談窓口へ話をすることなどの対応とともに、距離を置くようにしてください。

井上 陽平 氏
カウンセラー トラウマケア専門こころのえ相談室主宰
https://www.kokoro-ashiya.com/

社会人経験を経て、トラウマ臨床に興味を持つ。心理系大学院にて、トラウマを受けた心の世界について研究を行う。心と身体 の健康を高めるカウンセリング活動を行っている。主な技法は、 精神分析的アプローチと身体的アプローチとの融合。

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