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メンテナンス

運動不足というストレスからの脱却法

2022.2.28

こちらの記事はLIFE IS LONG JOURNAL様より許可を得て転載しております。
https://life-is-long.com/article/4685


皆さんには、身体を動かす習慣がありますか?

私はというと、ハードに運動するほうではありませんが、そのときどきで何かしら生活に取り入れています。
もう15年ほどずっと続けているのはヨガで、引っ越しをするたびに近所のスタジオを探して週に1回のペースで通っています。

ヨガに加えて、もう1つか2つのアクティビティを週1回続けるのが、私にとってはちょうどよく、メニューはその時々で変わっていきます。
週に1回勤務先から7キロほどの距離をのんびりランニングで帰る、中学時代に部活で入っていたバドミントンを再開、暗闇で跳ぶトランポリンにはまっていた、なんて時期もありました。
昨年の妊娠期間は、子ども時代ぶりにプールに通って泳いでいました。
ただ、COVID-19対策の中でのステイホームや、産後の身体の回復期、乳児と一緒の生活で、すっかり身体を動かす習慣から遠ざかってしまいました。

辛うじて続けているのはオンラインでのヨガのクラスくらいです。
同じように、ステイホーム生活やテレワークで通勤のない生活で身体を動かす機会が減ったという方は多いのではないでしょうか。
「最近運動できていないなぁ」、「もっと身体を動かさなければいけない」と考えながらも、なかなか行動にうつせない生活が続くと自己嫌悪になって、気分も下がっていく……こんな悪循環にもなりがちです。

悪循環に陥りそうになったときに私が思い出すのが、身体活動の定義と、運動強度の単位である「METs(メッツ)」です。
身体活動について研究をするとき、その定義は、「座って安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費するもの」です。
そして、METsは、安静時を1としたときと比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示す単位のことです。

こう考えると、私たちが普段行っている日常動作のほぼすべてが身体活動に入ります。
国立健康・栄養研究所の栄養・代謝研究部のホームページに掲載されている「改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』」を参考にすると、たとえば、「掃除機をかける」は3.3METs、「調理や食事の準備」は3.5Mets、「家の中で立って子どもと遊ぶ」のはその激しさに応じて3.5~5.8Metsです。

その他にも、階段の昇り降りや、立つことも身体活動に入ります。
こう考えると、今の生活でもやれていることって結構あるんだな、と思えます。
そして、何かちょっとプラスして付け加えられることをやってみようかなという視点に切り替えやすくなります。

身体活動をすることは、身体の健康にいいだけでなく、抑うつ・不安の改善などメンタルヘルスに効果があることが示されています。
少し気持ちが落ち込んでいるときや、不安が高まっているときに、身体活動を取り入れることが役に立つのです。
また、質のよい睡眠との関連も確認されています。
ステイホームの生活が始まったころ、うまく睡眠がとれないという相談を多く受けました。もちろん他の理由の場合もありますが、通勤や退勤による活動量が減って、単純に、以前ほど睡眠が必要ない生活になっていたために寝つきが悪くなっていた、という方もいました。
睡眠だけに注目するのではなく、活動量も含めた1日の過ごし方で見直すのもおすすめです。

COVID-19への対策で以前のような身体活動や運動ができない、という方もいらっしゃるかもしれませんが、日本運動疫学会が出している公式声明「新型コロナウイルス感染症流行下の身体活動不足・座りすぎ対策」を参考にすることができます。
30分に1回、3分ほど立ち上がって身体を動かすこと、掃除や買い物などの家事を活用すること、ストレッチをすることなどが挙げられています。
その他にも、家の中で身体活動を促進するゲーム、テレビ番組、ラジオ、インターネットの動画を活用することもできます。
そういう意味では、リングフィットアドベンチャーなど身体を動かすゲーム、Youtube上のさまざまなチャンネルなど、活用できるツールの選択肢はぐっと広がったのではと思っています。
今の生活に、何かひとつプラスする、プラス10分身体活動を増やす、といった具合に取り入れて、身体はもちろん、心の健やかさも手に入れませんか。

【参考文献】
・Rebar AL, Stanton R, Geard D, Short C, Duncan MJ, Vandelanotte C. A meta-meta-
analysis of the effect of physical activity on depression and anxiety in non-clinical adult
populations. Health Psychol Rev. 2015; 9: 366-378.
・日本運動疫学会:声明「新型コロナウイルス感染症流行下の身体活動不足・座りすぎ対
策」( 2020年4月18日). http://jaee.umin.jp/doc/covid19.pdf

関屋 裕希(せきや ゆき)
博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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