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メンタルケア

「効率」を忘れて、好奇心を解き放つ

2025.2.28

こちらの記事はLIFE IS LONG JOURNAL様より許可を得て転載しております。
https://life-is-long.com/article/7195


最近、皆さんが自分の好奇心の赴くままに行動したのは、どんな時ですか?
書店で新しい本を手に取ったときでしょうか。
誰かの話を聞いていて素朴な疑問を投げかけたときでしょうか。
通りがかりに新しく出来ていたお店のドアを開けたときでしょうか。
好奇心は、「知りたい」とか「体験したい」といった行動の原動力で、人が自発的に行動するきっかけのひとつとされています。

好奇心の5つの種類

好奇心というと、「自分は好奇心が強い」「そこまで強くない」など、強弱の軸に注目が当たりがちですが、実は、好奇心には5つの種類があります。
自分の好奇心はどこからきているのかな、自分が持っているのはどんな好奇心かな、と振り返りながら見てみてください。

1.欠乏の感受性(deprivation sensitivity)

知識の欠乏感(不快)による好奇心のことを指します。
たとえば、飛行機に乗ったとき、ふと手に取った機内誌にクロスワードパズルが載っていたとき、その不完全なさまに穴埋めせずにはいられない、なんてことはありませんか?
最初にこの要素を知ったときは、これも好奇心のひとつの形なんだと興味深く思いました。

2.探求の喜び(joyous exploration)

好奇心、と言われて最初にイメージするのは、これかもしれません。
自分になじみのない、新しい領域に足を踏み入れるとき、わくわくした感じがあるでしょうか。
私は、この好奇心の要素が強いようで、友人から「同じ山には登らないタイプ」と言われています。
たしかに、同じ山にもう一度登るよりは、新しい山に登ってみたいな、仕事でも趣味でもそういうところがあるかも、と妙に納得しました。

3.社会的好奇心(social curiosity)

これは、他者の思考や行動を知ろうとすることを指しています。
カフェで仕事をしていたら、隣の人たちの会話が気になって、聞き耳を立ててしまった、ということはありませんか?
人がドキュメンタリー番組に惹かれるのも、社会的好奇心が理由かもしれません。

4.ストレス耐性(stress tolerance)

これも、少し意外かもしれませんが、新しいものや珍しいものに手を伸ばすときには、不安が付き物です。
その不安を受け容れて、活かそうとするには、ストレス耐性が必要です。
ストレス耐性が低いと、人は新しいものへの探求を進めようとはしません。

5.スリルへの欲求(thrill seeking)

複雑で変化に富む強烈な体験をするためならリスクをいとわない、という感じです。
未知の何かに直面する不安を、むしろ魅力的なものに感じる人もいるのです。

職場という文脈の中では、この5つの中でも、特に社会的好奇心とストレス耐性が高い人が革新性と創造性を発揮しやすいことがわかっています。
ストレスに耐えられない人は、挑戦したり、他者の意見に異議を唱えようとはしないでしょうし、社会的好奇心の強い人は、周囲から支援を得ることを得意とし、信頼関係を築いたり、チームへの貢献にも長けています。

好奇心は心理的ウェルビーイングの指標のひとつ

ただ、短期的な目標にとらわれて効率を追求しすぎると、好奇心が犠牲になってしまいます。
好奇心は、私たちの幸福度につながり心理的ウェルビーイングの指標のひとつともされています。
時には、「効率」という言葉を忘れて、好奇心の赴くままに、探求してみるのはどうでしょうか。
思わぬヒントを得られるかもしれません。

【参考文献】
Kashdan, T. B., Stiksma, M. C., Disabato, D. J., Mcknight, P. E., Bekier, J., Kaji, J., & Lazarus, R. (2018). The five-dimensional curiosity scale: Capturing the band width of curiosity and identifying four unique subgroups of curious people. Journal of Research in Personality, 73, 130149.
Spielberger, C. D., & Reheiser, E. C. (2003). Measuring anxiety, anger, depression, and curiosity as emotional states and personality traits with the STAI, STAXI, and STPI. In M. J. Hilsenroth & D. L. Segal (Eds.), Comprehensive handbook of psychological assessment, Vol. 2. Personality assessment. New Jersey: John Wiley & Sons.

関屋 裕希(せきや ゆき)
博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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