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メンタルケア

家庭の悩みごとは「夫婦」の絆がテーマ

「悩みを摘みとる言葉」より

2019.12.1

親の介護問題も実は。

高齢化社会になり、介護問題は年々深刻化しています。家族がすべて背負い込むのには限界があり、公的な介護サービス機関をうまく利用しながら介護者の負担を減らしていかないと、共倒れになってしまいます。中には「心中」という最悪の結末を迎えるケースもあります。

ところが、この「公的な介護サービスを受ける」ということに抵抗を感じる人がまだまだ世の中には多いのです。特に地方では、「嫁がやるのが当然」という意識が強いので、「嫁なのに他人に頼んで楽をしている」と周囲に思われたくない一心で、負担をすべて受け入れてしまい、うつ寸前の症状まで追いこまれている女性が少なくありません。

こういう場合、最初は「自分が全部やること」を美徳と考える相談者の意識をときほぐしていくことから始めます。「あなたにしかできないことは『どれ』と『どれ』で、他の人でもいいことは『どれ』と『どれ』なのかな」というように、しなくてはならない介護ケアを、話をお聞きながら整理していき、「この部分とこの部分に関しては、こういうサービスが利用できますよ」といった情報提供をしていくのです。

この「問題の小分け作業」は、どのジャンルの相談にも適用できます。相談者にとって、心配事というのは、ブドウの房のように重なりあい、からみあって大きく見えてしまうものですが、このブドウのかたまりをひとつの現象としてとらえるのではなく、分解が可能な小さな問題の集合体として認識してもらうのです。

要するに、からみあっているからこそ行き詰まり、「もう無理」「限界」と感じてパニックになってしまうのです。一粒単位に小分けすれば、問題がシンプルになり、「この問題はこう」「こっちの問題はこう」というように冷静に対処しやすくなります。

最初に、家庭の悩みは夫婦の絆と書きましたが、介護問題にもそれが言えます。「介護が大変で…」という相談がくると、一見介護の負担が問題のように見えるのですが、よくよく話を聞いていくと、主訴は「夫への不満」であることが多いのです。夫婦仲が悪いというよりは、コミュニケーションの問題で、介護問題について夫婦の間でき思いを口に出していないケースが目立ちます。

「ねぎらいの言葉をかける」
「介護をしている妻の苦労を認め感謝の気持を伝える」

これだけで妻のストレスはぐっと軽減します。ただ、夫は夫で「妻が大変なのはわかってるし、すまないなと思っているけれど、なんと言葉をかけたらいいのかわからない」という人も多いので、まずは夫と話すきっかけを妻のほうで作ることも重要です。

その際気を付けたいのは、「なんで私ばっかり」「もうやってられない」といきなり相手を責めたり怒りをあらわにしないことです。夫もつい言いたくない言葉で応戦してしまい、肝心の話し合いができなくなってしまう可能性があります。「私も精一杯やってるんだけど、今日お義母さんに怒られちゃって・・・」といった感じで、冷静に柔らかな表現から始めると夫も話をきく耳ができオープンマインドな態度になりやすいですね。アサーティブな会話で夫婦の絆を深めて頂けたらと願います。

絆に関する夫婦問題

夫婦問題といえば、多くが「離婚問題」がテーマです。特徴的なのは、「離婚騒動」の渦中よりも、「離婚してしばらくしてから」のほうが精神的にきついと訴える方が多いことです。離婚の渦中、あるいは離婚直後は、相手に対する「怒り」の感情のほうがつよいものですが、独りぼっちになってしばらくたつと、だんだん「さびしさ」の感情が広がるようになってきます。

一般的に男性は自分の気持ちをギリギリまで押さえ込む傾向があり、弱みを見せることを「男としてみっともない」と考える人が多いようです。相談しつつも「グジグジしててみっともないですよね」と自分を責めるようなことを繰り返し言うのは圧倒的に男性です。ですから、重要なのはまずその苦しさを受け止め、「あなたの反応は当然のものだと思いますよ。それは苦しいですよね」と認め受け止めてお聴きします。これだけでも相談者はかなり安堵され、落ち着いてこられます。

自分の気持ちに気づきにくい男性にとっては、「そうか。当然なんだ」「自分は苦しいんだ」「苦しくていいんだ」・・・というふうに「自分の気持ちに気づく」ことが、解決への第一歩になります。

また、一人になってしまった不安から、未来の可能性を自ら閉ざしてしまっている人が多く、そのことがよけいに自分を苦しめています。「もはやここまで」「自分にはもうこういう孤独な生活しかできない」「この状況が死ぬまで続くんだ」「もうおしまいだ」・・・というように、現状を結論として固定してしまう考えに凝り固まっているんですね。そういう人には「今はそういうお気持ちだとしても、これからは様々な可能性があるのでは?」といった未来へ視野を広げる言葉かけをしていきます。

相手もそのときは「そんな気休めを言って」としか思わないかもしれませんが、それでもいいのです。「あなたの前には違う道も広がってるんだよ」という可能性を提示するだけでも、相手の心にはその言葉がインプットされます。インプットは暗示になり、時間をかけてその人の体にしみわたっていきます。大きな突破口でなくても、最初は小窓を開けるだけでいいのです。

― 2008年発刊「悩みを摘みとる言葉」山﨑 敦 著(扶桑社)より抜粋。
今回の掲載に当たり一部改定しています。〈2019年12月1日〉
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山﨑 敦 氏
株式会社セーフティネット 取締役会長 

1967年防衛大卒 防衛庁海上自衛隊に入隊し、
第6航空隊司令、下総教育航空群司令などを歴任し1999年12月に退職。
(株)パソナ入社。かつて3名の部下を自殺で失った経験から、2001年1月、自殺防止を目指したメンタルヘルスケアを事業とする(株)セーフティネットを設立。以降、会員企業の社員、家族から毎月3,000件を超える相談を受けてきた。

セーフティネット 山﨑 敦さんの記事一覧

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