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メンタルケア

匂いは生存に直結する

嗅覚力を磨いて生存能力をあげる!

2019.10.3

匂いがしない世界って。

「何を食べても美味しいと感じません」。
心療内科を訪れる方で、このようにおっしゃる方は少なくありません。

「美味しい」という感覚は、食材や調理法、口あたり、食す環境などにより、複合的にもたらされるもの。
特に、口中で立ち上る匂いや、風味は重要な要素です。
試しに、鼻をつまんで食事をしてみて下さい。
その心地悪さに、食の匂いがいかに重要かを知ることができます。

このような方々も、健康状態が良くなり身体が回復されてくると、匂いが分かるようになります。
生活の中にある良い香りを楽しみ、植物の香りに心を踊らせ、降り始めの雨の香りから安らぎを覚えるにつれて、次第に生命の躍動が蘇ってくるようです。

動物をみれば、嗅覚の重要性がわかります

生き抜くための感覚、嗅覚。

私たちは五感で外界の情報を得ています。
五感とは、視覚(みる)、聴覚(きく)、触覚(ふれる)、味覚(あじわう)、そして嗅覚(におう)の五つの感覚。
嗅覚は、情動や生植に関わる脳の部位、大脳辺縁系に直接信号を送り、動物として生きることに関わる情報を素早く伝える役割を担っています。
「あなたにとって五感のうち、どの感覚が最も重要ですか?」
と質問すると、9割以上の方は視覚と答え、嗅覚と答える方はほとんどいません。

しかし、嗅覚は生存に欠かせない重要な感覚です。
生まれたての赤ちゃんはお母さんの乳首に吸い付きますが、これは匂いを手掛かりにしていると言われます。
また異性選びにおいて、匂いだけで選んだ異性は、生まれてくる子どもの免疫に多様性が生まれる相手、つまり、どんな環境下でも生存に有利な子どもが残せる異性を匂いで選ぶという研究があります。

匂いが伝えるメッセージを活用しよう!

このように生きる上で欠かせない情報を伝えている嗅覚を、
あなたは日常的にどれくらい利用しているでしょうか。

賞味期限で食の可否を知り、気に入った銘柄やビンテージのついたワインを良い香りだと判断してはいませんか?

匂いは情報の影響を受けますが、情報をできるだけ排除した環境で、目の前にある匂いをどう感じるかは記憶や体調、遺伝子などの個人差や、気候や時間などが関わり変化します。
喉が乾いていれば水が美味しく感じるように、その時にあなたが必要な物の匂いが、良い香りと感じるのです。

匂いを嗅ぐ機会を増やすことで嗅覚は鍛えられます。
さらに、嗅覚で選択する経験を増やすことで、嗅覚による選択力は育まれます。

探せばすぐに膨大な情報を取得できる現代です。
目や耳に入る正誤の曖昧な情報を編集したストーリーを作り出し、自分に都合のいい情報を社会に発信していくという戦略が多様に繰り広げられています。
このような社会では、情報を鵜呑みにせず「あれ? 少しおかしいぞ」と気づく力が求められるでしょう。
この力は、嗅覚が担っているのかもしれません。
「あれ? なんだかうさん臭いぞ」と。

松尾 祥子氏
公認心理師 臨床心理士 赤坂溜池クリニック心理士 SAFARI代表

1999年よりアロマセラピー、アーユルヴェーダなどの自然療法とアメリカ西海岸の統合的心理療法をベースに、「香り×心理×サスティナブルなコミュニティ」をキーワードに活動する。現在は、個人カウンセリング・グループセラピーや研修に加え、持続可能な社会の研究やEAPにも従事する。生活に欠かせないものは波乗りと山歩きと秋のキノコ。
地球と宇宙とココロのおはなし。http://www.aroma-safari.com

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